ほ〜むぷらざさんに、「ワンコイン勉強室から」というタイトルで連載の機会を頂きました。
画像をクリックするとPDFファイルを開いて、ページ右上の「 ↓ 」ボタンからダウンロードもできますので、ご関心ある方はお楽しみ頂けたら嬉しいです。
また、1300文字程度の原稿を書いて、ちょこちょこカットされてしまってたりするので、ブログでは元原稿をそのままアップしたいと思います。
カットの理由としては、文字数の調整もありますが、いろんな方が読む媒体なので、「誰か特定の人を傷つけたりしないように」という視点で編集者さんに編集して頂いています。
このカットが、普段好き勝手にブログやfacebookを書いている時と緊張感が全く違うので、とても勉強になります。
____ 以下、元原稿 ____
タイトル:安心作りから楽しさの伝染
受験を控える中3女子のYさん。中1数学の比例と反比例の問題が解けずに困っていました。
彼女が困っていたのは次の問題 [ 平成24年沖縄県立高校入試問題の大問2(9)、yはxに比例し,y=2のときx=-8である。x=-3のときy=? ]
どこから聞いたのか忘れてしまいましたが、とっても効果的なので私は数学が苦手と宣言する生徒にこんなことを伝えます。「素直でまじめで丁寧な人って数学が苦手になりやすいよ。」と。世の中の人からは反感に合うかもしれませんが、そんな事をあえて言う事で生徒を驚かせます。そして続けてこう言います。
「数学は、いかに楽に簡単に早く正確に解けるか。その為に計算のコツをつかったり中学校では公式を覚えて楽に簡単に早く正確に解く練習をするんだよ。」と。
前置きを終えて先ほどの問題を小学生っぽい簡単な解き方のヒントを与えて答を導きます。答えが出せた彼女に、今度は公式を使って簡単に解く方法を教えます。
普通はここで「あはぁ〜、だから公式を覚えるわけね!なにか他の問題ある?」とハッピーエンドを迎えます。
生徒の困りごとには、見える事と見えない事の2つがあります。見える困り事には計算ミスだったり公式を覚えきれてなかったり、そもそも小数や分数の掛け算や割り算が怪しかったりする「技術」があります。
難しいのは見えない困り事です。
公式の使い方を教わったYさんはこんな事をぼそっとつぶやきました。
「先生、私は中1の時からその公式の意味がわかりませんでした。わからないものをわからないまま使ってもいいんですか?」
世の中には私たち大人でもわからなくて使っているような物事って結構あると思います。彼女は、わからないことを真剣に悩んで公式を【利用する】事に進めていなかったのです。
「Yさん、わかるとできるは違うんだよ。中学までは公式を”使えるようになる”事でいい。公式の意味や成り立ちが”わかる”事は高校や大学でやるんだよ。高校になるとね、何で円や球の体積があの公式を使うか自分でわかる事ができるんだよ。すごくない?もっとわからないことをわかるには大学というところに行ってもっと勉強するんだよ。」
「すごそうですね。今は公式を使う練習をします。」
後日、Yさんが教室にやって来てワンコイン学習を始めました。
「Yさん、調子どう?」
「数学楽しいです。」
「え?どうして?」
「わからないものはわからないから、これからは新しい気持ちで新しい事を知る事ができるんだと思えてきて数学の問題を解く事が楽しくなってきました。もっと早く知っていれば良かった〜」
「Yねーねーすごーい。なんかすごい事言ってる。もう一回言って〜」
向かい側で食い入るように中学生の勉強を見ていた小5女子が、Yさんの言葉に感動してホワイトボードに書き出しました。
見えない困り事はたとえ見えなくても、じっくりゆっくり丁寧に時間をかけて向き合っているとぼそっと「つぶやき」という形で現れます。
それに向き合えた時、困りごとや心のつっかかりや頭の片隅にあったモヤモヤは案外あっさりと払拭できて、子ども達は安心して勉強を楽しく学び始めます。
そしてその学びの楽しさは近くの子どもに伝染していきます。